私と菊とあなた



目の前に広がる菊の花たちが
私に現実を思い知らせていた


優しいものを失うのがこんなにも怖いなんて
それを繋ぎとめるすべも無いなんて
いったい誰が気付いただろう


今のあなたの身体は
私の体温をただ奪うだけ


こんなにも大切にしてきたのに
いとも簡単に灰にされていってしまう


私の目の前に広がる菊の花たちと共に


私を残して逝くのなら
菊の花の代わりに私を連れて行って


優しいものを失うのがこんなにも怖いなんて
大切なものを壊される感覚が空っぽの私を支配していく


あなたの名前を呼ぼうとも
あなたの言葉を繰り返しても
あなたとの思い出を思い出しても


優しいものを失うのがこんなにも怖いなんて
あなたは私のすべてだった
それに今更気が付いた


たとえ一秒あなたが私のそばに居てくれたのなら
それだけでたくさんのことを伝えられた


私の名前を呼んで
私の言葉を聴いて
私との思い出を忘れないで


目の前の菊の花たちを掻き分けて
私はあなたの元へ逝くから


優しいものを失うのがこんなにも怖いなんて
あなたが隣に居ないのがこんなに寂しいなんて


あなたの前で流すことが出来なかった涙が
止めるのがこれほど難しい


冷めないあなたへの想いが
これほど辛いなんて