携帯電話


無機質な感触が手のひらに在る
なにもないのに
なにかあるかも
そんな期待をさせては裏切られる

無機質なのに無くなるのが怖い
簡単な絆や
切れやすい会話
声はもう、文字より必要とされなくなった

“ボタン一つで”
“指一つで”
そんな文字ばかりが
私たちを支配する

声だけじゃ不安になる
文字だけじゃ不安になる

ぬくもりが欲しいのに
表情が見たいのに

機械は冷たい
画面越しは虚しい

無機質な感触を確認しながら
君はどこにいるの
何をしているの
そればかりが心を蝕む

いくらでも欺ける
いくらでも素直になれる

だけど真意を確かめるには不確かで

無機質な感触を弄びながら
画面を見ながら
ボタンを押しながら
自分の矛盾した行動を嘲る