空と馬


“空をとびたい。馬のように。”


そう言った小さな女の子


いつも空と馬の絵を描いて
夢見る表情で空を見ていた


白と青の空に茶色と黒の馬を夢見て


“夜をとんでみたい。迎えに来てくれるかな?”


そう言った小さな女の子


星空を食い入るように見つめて
待っているのは黒の馬


私は茶色の馬だと女の子は言った


“これがクロのおうち。すごく綺麗だったの。”


嬉しそうに女の子は絵を描いた


周りの大人はそんな女の子を笑った
夢でも見ただけだと言った


鮮明に描かれた絵も夢を見ただけだと


“私はとんだのよ。クロと空を。”


悲しそうに女の子は言った


大人はそんな女の子を叱った
いつまでも嘘をつくなと


頭がおかしいんだと蔑んだ


“私は嘘つきじゃない。だって、ほら。”


瞳に涙をためて女の子は空を見る


開けられた窓に近寄ってくる
一頭の黒い馬


優しく優しく女の子に身を寄せる馬


“空においで。僕と一緒に。”


黒い馬はそう言った


小さく頷く女の子は
窓際に立つと茶色の馬となった


“サヨナラ、ユメヲワスレタ、オトナタチ。”


そういうと女の子は飛び立った。